電子回路の限界
電子回路には様々な理由で限界があります。この限界を知っていないと実現不可
能な回路を設計したり、意味の無い物を作ってしまったりします。
例えば物理的な限界というのがあります。通常の設計では物理的限界に近づくの
はそれなりに大変ですが、考慮しなければならないことです。物理的限界のひとつ
に、KTB、つまりボルツマン定数、温度、帯域幅で表される熱雑音があります。
信号源抵抗が高い時や、FM信号のよ
うに帯域が広い時には気になる雑音です。受信機のプリアンプを設計する時には、
宇宙の背景輻射の雑音温度以下が目標ですが、それ以下の物を作ってもあまり意味
がありません。光の速度は有限ですから、プリント基板やケーブル20cmほどで
信号が1ns遅れるのはどうしようもないことです。
他には、部品の性能限界による限界があります。年々、電子部品の性能は向上し
ていますが、色々な制限のなかで設計することに変わりはありません。例えば、オ
ペアンプの性能が良くなったとしても、100V100Aの出力なんていうのは非
現実的ですし、1Hのインダクタ、1Fのコンデンサなんていうのも、やって出来
なくはないけど、重さと体積とコストを考えると直接的に実現するのはスマートで
はありません。微少な電圧を扱う時には、熱起電力による雑音が気になりますし、
アンプも入力換算雑音が500pV/√Hz程度以下のものになるとなかなか困難
になってきます。ダイナミックレンジも100μVから1Vまでを扱えるとして、
80dBくらいですから100dBを越える場合は限界がすぐそこに来ています。
電子の移動速度の限界と量子効果の弊害から、半導体素子の限界動作周波数も数
十GHz止まりです。何かの性能を犠牲にして目的とする処理の性能が最大になる
ように妥協しているのが現状です。
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