回路図に現れない部品

 学校の物理の授業で、電流が流れるとそのまわりに磁界が発生するということは 教わったと思います。ビオサバールの法則なんていうのも、やったかも知れません。 また、閉回路を貫く磁束が変化すると、その閉回路に電流が流れることも、ご存じ のことと思います。他にも、2枚の金属平板を向かい合わせたコンデンサの説明も あったと思います。  物理で習ったこれらの事は、「電子部品のコイルには」とか「電子部品のコンデ ンサでは」ではありませんでしたね。つまり、長さがあればインダクタ、配線が平 行していればトランス、隙間があればキャパシタであるということです。 例えば、 太さが0.5mmくらいで長さが10mmくらいのリード線があったとすると、そ れは、およそ10nHのインダクタになります。高周波増幅用トランジスタのエミ ッタのリード線が10mmあったとして、100MHzだとリアクタンス6.3Ω、 もう無視できない値ですね。(Note)  配線の長さも扱う波長に比べて1/1000くらいならば、つまりスミスチャー ト上での位相回転が1度未満ならば、無視できるとして、例えば、2.4GHz帯 において1mmの配線長は無視できるでしょうか。真空中で2.4GHzの波長は 125mm、テフロン基板上で90mmくらい、つまり約8度の位相回転になりま す。周波数が高い時には、はんだ付け部分くらいの長さすら無視できない程になる ということを理解しておきましょう。  配線抵抗も忘れてはいけません、銅の比抵抗は常温(300K)で1.8×10^−8[Ωm]くらい(note) ですから例えばプリント基板の銅箔の厚さが18μm、パターン幅が1mm、配線長が 100mmですと100mΩくらいになります。このパターンを流れる電流に5mA の変化があったとすると、500μVの雑音電圧が発生するわけです。これがマイ クロフォン入力など微少なところだと無視できない雑音源になりますし、アンプな どでは異常発振の原因になるかもしれません。  はんだ付けのはんだの比抵抗は、銅に比べると一桁くらい大きく、接続抵抗が気 になる場合は圧着や溶着をする必要があるかもしれません。  プリント基板は、完全な絶縁体というわけではないので、高インピーダンスの回 路や高周波回路では特性が問題になるかもしれません。例えば1MΩの抵抗が実装 されていて、湿度や埃の影響で端子間の絶縁抵抗が100MΩ程度まで下がったと すると、もう誤差が1パーセントになってしまいます。紙エポキシや紙フェノール の場合は、エッチングの後処理の影響などで基板自体が吸湿しやすい性質がありま す。埃の吸湿などによる絶縁低下も考えられます。UHF帯以上の周波数では基板 の誘電損失が無視できなくなります。10MHz〜300MHz、がんばって1G Hz、無理して2GHzまではガラスエポキシ、300MHz〜10GHzはテフ ロンガラスやPPO、20GHzくらいまではテフロン基板が使えます。

Note: L[nH]=0.2l(ln(4l/a - 0.75 + a/2l))
Note: 銅の比抵抗[Ωm] 1.55×10^−8@0℃、2.23×10^−8@100℃
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