部品が出す雑音

トランジスタの雑音
 バイポーラトランジスタのエミッタ接地増幅器の雑音は次のように表されます。 ベース抵抗をrbb’とし、相互コンダクタンスをgmとすると電圧雑音源は、 en=√(4KTB(rbb'+1/2gm)) 電流雑音源は、 in=√(4KTB(2β/gm))=√(2qIbB) で表されます。  FETの場合は、ゲート漏れ電流をIgとして、 en=√(4KTB/gm) in=√(2qIgB) と表されます。  信号源抵抗をRsとすると、増幅器の入力換算総合雑音電圧は、 etotal^2=eRs^2+en^2 +(inRs)^2 +2γenin ただし、γはenとinの相関係数で −1<γ<1の値をとります。 雑音指数は、信号源抵抗の熱雑音をersとすると、 NF=(etotal/ers)^2 で表されます。 これらから、eninが最小で、Rsがen/inのときNFが最小になることに なります。バイポーラトランジスタでは、低電流にバイアスし、FETのゲート漏 れ電流はドレイン−ソース間電圧に指数関数的に比例して増加しますから、FET は低電圧で使用することが好ましいことが判ります。  また、周波数が高い場合は、周波数の2乗に比例する雑音が支配的ですので、遮 断周波数が高く増幅度の大きいデバイスを使用するようにします。  GaAsFETは、超高周波域での雑音は少ないのですが、HF以下の雑音特性 はバイポーラトランジスタに比べて悪いため、発振器に使用する場合CN比があま りとれないので、比較的低い周波数ではバイポーラの方に分があります。
寄生振動による雑音
 トランジスタなどで増幅器を作る場合、意図しない周波数で発振が起っていたり することがあります。増幅器を設計する場合、能動素子のゲインが1以上のすべて の帯域と考えられる動作点、負荷のすべてにおいて安定条件を満たすように心掛け ます。その配慮を怠たると発振条件を満たす周波数で寄生振動が生じる訳です。ま た電源には 使用する周波数帯で十分インピーダンスの低い値のデカップリングコン デンサを入れます。入力と出力が不用意に近づいているような実装がされていると、 容量や誘導結合によって発振を引き起こすかも知れません。  オペアンプの場合はユニティゲイン周波数で位相余裕があることが必要条件です。 オペアンプに電流バッファやプリアンプをつけた場合は、その分だけ余分に位相が 回りますので、それを考慮して位相補償を行う必要があります。負荷容量が大きい 時にも位相余裕が減少しますので、位相補償の為に帰還容量を追加したり出力に直 列に抵抗を入れたりして対策します。 トランジスタの場合、特にエミッタフォロワとして使用した場合は全帰還がかか っているのとかわりませんから、非常に発振しやすくなっています。こういう場合 は、直列に10Ωから100Ω程度の抵抗をベースに直列に入れたり、場合によっ ては、フェライトビーズをベースに入れることによって帯域を制限して対策します。  マイクロ波回路では、電磁輻射による入出力の結合により寄生振動が発生するこ ともあります。その様な時は、入出力をシールドで分離したり、電波吸収シートを 増幅器周囲に張り付けたりして対策します。


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