歪み

回路に非線形な部分があれば、必ず歪みが発生します。通常の増幅器では負帰還 をかけることによって、1/帰還量に歪みを軽減しています。高精度直流増幅器の オープンループゲインが非常に大きく作られているのは、この誤差を少なくするた めです。

 単一周波数の信号が歪みにより高調波を発生したとしても、LPFで高調波を取 り除くことができますが、複数の周波数の信号が非線形回路を通った場合は、必要 とする帯域内に歪みによる雑音が発生するため無視することが出来ません。例えば 近接した2つの周波数の信号が非線形回路を通った場合、それぞれの信号のn次の 高調波同士の差にあたる信号が帯域内に発生するために、スペクトラムアナライザ で見ると元の信号から差の周波数だけ離れた位置ごと歪みが発生していることがわ かります。この歪みを相互変調歪みと呼びます。この歪みは、信号レベルが大きく なるにつれ、もとの信号の倍の速さで増加します。もとの信号レベルとこの歪みの レベルが同じになると考えられる点をインターセプトポイントと呼びます。受信機 などで、目的周波数に近接して強力な信号があると、この歪みにより、激しい妨害 を受けることがあります。このとき、減衰器をいれると妨害が減るのは、信号が半 分に減っても、妨害も1/4に減少するからです。

 オペアンプの出力対歪み率特性のグラフを見ると、出力が小さい時に増加するの はアンプの内部雑音のせいで、出力が大きくなると急激に増加するのは出力の飽和 による歪みと見ることができます。

変わった種類の音の歪みとしては、スピーカーに低音と高音が乗っている場合、 コーン紙が低音で前後するために高音がドップラーシフトした結果、周波数変調が かかるといったようなものや、発熱による特性変化による再変調歪みといったもの もあります。


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