環境問題としての雑音
雑音対策の基本は、まず雑音を発生させないことです。どうしても発生するもの
は、その発生するレベルを出来る限り下げることです。電磁波として出る雑音は、
電波法によって規制されていまし、米国などに輸出を行う場合はFCCで雑音レベ
ルが規制されています。医療用などではさらに厳しく制限されています。また、発
生する可能性のある周波数が、重要な放送や通信、電波天文学などに影響を与えな
い周波数になるように設計する心掛けも必要です。
不要輻射
その装置または回路が目的とする帯域以外で発生する、すべての電磁放射のこと
を不要輻射(スプリアス)と呼びます。不要輻射は全く発生しないのが理想ですが、
色々と発生しているのが現状です。パーソナルコンピュータなど、電波の送受信に
関係のないものでも、クロック信号やDRAMのリフレッシュ電流などにより、か
なりの輻射があることがあります。クロック周波数が40MHzだと、2倍の高調
波がFM放送帯を直撃するといったことに気付かなければなりません。
電流や電圧の急激に変化するところは、雑音の発生源だと思って間違いありませ
ん。例えば、周波数ミキサー、チョッパ、スイッチング電源、モーターのブラシ電
極、高速サンプル・アンド・ホールド回路、ロジックIC回路などがあります。
また、送信アンプなどでは増幅素子の非直線性によって歪みが発生して、高調波
が出ますので、ローパスフィルタなどで不要な帯域を取り除き、場合によっては、
増幅素子に負帰還をかけて歪み自体を改善することもあります。
不要輻射を減らすためには、次のような対策を行います。
雑音は元から絶つ
- 必要以上に高速な部品を使用しない。
- 定在波による輻射を減らすために、整合を行う。
- 外部につながる信号線には、帯域制限フィルタを通す。
- 不要な帯域はフィルタで分離し終端する。
- ロジック回路などでは、直列終端や、終端を施す。
- 必要以上の電圧の立ち上がりがあるような部分には直列に抵抗やフェライトビーズを入れて立ち上がりを遅くする。(dV/dtを減らす)
- 電流をスイッチングする部分にはスナバ回路を入れる。(di/dtを減らす)
- 雑音の原因となる部分の信号レベルを必要最低限にまで小さくする。
雑音が発生しても少しで済むようにする
- 雑音の発生部分の回路サイズを小さくする。
- 雑音電流の流れるループの面積を出来るだけ小さくする。
- 雑音電流が流れる配線とそのリターン線をツイストする。
- 発振回路などでは、高調波などが通信、放送などに影響を与えない周波数を選ぶ。
雑音は外へ出さない
- 雑音発生部にシールドを施す。
- シャシーもシールドとして使用する。
- 基板にグランドプレーンを設ける。場合によっては、電源として使用するグランドとは別に、シールドの為だけに表面にもう一つグランドプレーンを設ける。
- 外部へ出る信号線は、シールド線を使用する。
- 可能ならば、外部と内部を光アイソレータなどで分離する。
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