電源投入、切断時

 電子回路が誤動作を起こしたり、故障を起こす一番可能性が高いのは、電源を入 れたり切ったりする時です。電源を入れた時には、回路のコンデンサを充電するた めに突入電流(ラッシュカレント)と呼ぶ大電流が流れて、素子の規格を超過した り、回路の各部の電圧や電流が定常状態になっていないために、異常な動作をした りする場合があるからです。また、消費電力が0からある値に急に変化するわけで すから、熱的な衝撃(サーマルショック)により、パッケージや内部配線などの熱 膨張率の違いなどで歪みが発生して故障するといったことにつながります。  こういった障害は、適切な設計をすることにより防ぐことの出来るものですから 定常状態以外の設計をしっかり考慮することです。

 突入電流の別の例として、白熱電球は電源の投入時に切れることが多い理由と対 策を挙げてみます。白熱電球のフィラメントは、ニッケル、クロム、タングステン などの金属の合金ですが、金属の電気伝導度は温度が高いほど悪くなります。つま り、電球が消灯して冷えているときの電気伝導度は、点燈時に比べて何倍も大きく なっているため、電源投入時には10倍を越える電流が流れることがあります。こ ういう大電流が流れると、金属が急激に熱膨張したり、またローレンツ力で振動を 受けたりして切れることや、その時にフィラメント同士が接触して過電流が流れた りして熔断に至ることになります。こういう故障を防ぐためには、完全に冷えきら なければ過電流は小さくできるわけですから、常に光らない程度に電流を流してお くとか、電球に直列に電流制限抵抗を入れるといった対策が考えられます。実際に、 信頼性が要求される交通信号器も、夜中に見ると点燈していない信号も、ほのかに 光っているのが見え、そういった対策を行っているのがわかります。
 もっとも、最良の解決策は過渡状態に問題が発生しない部品を採用する事ですから 高輝度LEDが安価になった現在は、故障率の低いLEDランプに置き換わりつつ あります。


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