温度変化や熱の回路に対する影響
温度変化や温度勾配は色々なところで、回路の特性に影響を及ぼします。
抵抗やコンデンサなどの値は300ppm/℃くらいのものが多く、30℃の温
度変化で1%程度の変動になります。シリコン接合の順方向電圧も約−2mV/℃、
シリコンプレーナトランジスタのhFEは1%/℃、コレクタ飽和電圧は0.5%/
℃くらい、変化します。定電流バイアスしたダイオードや測温抵抗を温度計センサ
として使用する場合、自己発熱による温度上昇と、周囲の風の影響で測定誤差が増
える場合がありますので、バイアス電流を少なくする必要があります。
差動増幅器では、ふたつの能動素子の温度の違いによりオフセット電圧ドリフト
が発生することがあります。高精度な差動増幅器では、同じチップ上の隣り合う2
つのトランジスタを使用したり、隣接する4つのトランジスタを対角同士ペアにし
て熱勾配の影響を軽減しています。
パワーアンプのトランジスタのバイアス回路や、過電流保護回路は、パワートラ
ンジスタに熱的に結合したトランジスタなどを使用して発熱による特性変化に対応
するようにします。
パワーオペアンプなどで、低周波(熱抵抗と熱容量の時定数に比べて低い周波数)
の信号を出力すると、温度によって特性が変わるために、変調を受け、歪率が悪化
したりします。
ミリ波の超低雑音増幅器では、素子の熱雑音を減らすために液体窒素で冷却して
いるものもあります。
水晶発振回路などでは、温度補償型のものでも温度変化により0.3ppm程度
は変動しますからから、VHF以上の周波数では温度安定度に対する要求が厳しく
なります。1GHzの0.3ppmは300Hzになります。通信機として考える
とFMならともかく、SSBでは厳しいものでしょう。下手をすればオフバンドや
安定度で電波法違反になってしまいます。
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