放熱設計

 放熱設計をするときは、電気回路のようなモデルに置き換えて考えると簡単です。 オームの法則みたいに、あるθ[℃/W]の熱抵抗に、P[W]の熱が流れると、 T[℃]の温度差が発生する、と考えるわけです。熱容量がある場合は、CRの時 定数回路と同様に考えます。  放熱器を決めるには、次のようにします。例えばTO−220型のパッケージで 25℃での最大消費電力が15W、最大接合部温度が175℃、チップからパッケ ージへの熱抵抗が3℃/W、パッケージから雰囲気への熱抵抗が50℃/Wとしま す。この部品に最大で5V、1Aで5Wの電力消費があるとします。最大保証動作 温度を50℃とするとどうすればよいでしょう。5Wの消費電力が許容できる最大 接合部温度は、

Tjmax=175℃−(175℃−25℃)×(5W/15W)
=125℃

接合部と外気温との差が、75℃ということになりますから、 必要な、総合熱抵抗は

θtotal=125℃/5W
=25[℃/W]

安全係数を2倍見込んで、12.5℃/Wが要求値とすると、放熱器とパッケージ との間の熱抵抗を0.5℃/Wとすると、放熱器の熱抵抗θhsは、

12.5−0.5−3=1/(1/50 +1/θhs)[℃/W]
θhs≒11℃/W

の物を用意すれば良いことになります。
放熱器の温度抵抗は、発熱による上昇気流 によって冷却される分を見込んでいますから、フィンの向きは鉛直方向に空気が流 れる向きにします。放熱器もこの程度の大きさだと大したことがありませんが、熱 抵抗が1℃/Wくらいから、だんだん現実的でない大きさになってきます。それは 体積は3乗のオーダーで増えていくのに対し面積は2乗のオーダーでしか増えない からです。ですから、消費電力が大きい場合は、トランジスタを複数に分けて熱の 分散を図ります。放熱器に、あたる風が、ほんの数m/sでも等価熱抵抗は随分と 下がりますから騒音と信頼性の点で問題が無ければファンで強制空冷を行います。

装置を筐体内に格納する場合には、筐体内の発熱量と通風量から筐体内温度と吸気 温度の差を見積もる必要もあります。

温度差 [K] = 内部発熱量 [W] /(空気密度 [kg/m3]・ 空気比熱 [J/kg・K]・風量 [m3/s])

ですので、例えば筐体内消費電力が 110W、風量が 0.02 m3、 空気密度×空気比熱をざっと 1.1kJ/K/m3 とすれば、温度差ΔTは、

ΔT=110/(1100×0.02)
=5[K]

となり、5度の温度差となります。空気密度や比熱は気圧や湿度により変わります ので標高が高い場合などは特に考慮する必要があります。

これ以上の放熱が必要な場合や熱流束が大きい場合には、ヒートパイプを利用した 強制空冷を行います。ただし、ヒートパイプは有効動作温度や取付角度の制限が ありますので設計にはより注意が必要です。それ以上の発熱の場合は、水や冷媒を 使用した液冷や極端な場合には気化冷却を行うことになるでしょう。


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