信頼性

 電子回路の信頼性の重要さとは、どのようなものでしょう。ほんのちょっとの設 計上の手間をけちったばかりに、人命に影響がでたり多大な損害を及ぼすことがあ るということを知るために幾つかの例を挙げてみましょう。

 水位センサのプリアンプの抵抗値が基板の汚れによって少し低下した結果。  あるダムの水位が1m程下がりました。このことによって面積が広大ですから大 量の貯水が失われました。このダムは中国地方の降水量の少ない所でしたので、こ のことによる直接的、間接的被害は多大なものになりました。
 回転数センサに高周波雑音対策用のフィルタを省いていた結果。  市民ラジオの電波が回転数センサに誘導した結果、燃料噴射制御プロセッサはエ ンジンの回転が上昇したものと誤解して、噴射量を増加したため車は暴走し死傷者 が出ました。
 過電圧センサのアンプに普通のオペアンプを使用していた結果。  あるプリンタのスイッチング電源の過電圧センサに、過渡的にコモンモードレン ジを越える電圧が入った結果、出力が反転し制限がかからなくなったため、電源の 制御がかからなくなり、プリンタヘッドやモーターが加熱、プリンタ用紙から出火 しました。

 こういった極端な例以外でも、ある装置の誤動作のために問題となった場合、訴 訟を受けた場合の裁判費用や慰謝料、会社のイメージ低下による間接的損失や、装 置の交換や修理に要する費用などを想像するといいかげんな気持ちでは設計できな いと思います。量産品では、例えば一日に300台製造され、そのコストが4万円 だったとして、問題に気がついて対応に10日かかったとします。その10日の間 に単純に考えても1億2千万円の損害が出るわけです。軍事用途や航空宇宙、海底 ケーブル、医療機器などに要求される信頼性は、とてつもなく高いものがあります。

 では、色々な信頼性について考えていきましょう。
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