故障率
形あるものは、統計的にある確率で故障(誤動作を含む)するものです。ある製
品なり部品についてみてみると、故障率に3種類のパターンがあることが判ります。
- 最初は、時間の経過とともに故障率が減少する、初期不良期間。
- 次は、安定して一定の低い確率で故障する、偶発故障期間。
- 最後は、寿命がやってきて故障する、磨耗故障期間。
初期不良は、エージングを行うことによりある程度排除することができますし、
色々な製品で1年程度の保証期間を設けているのは、この初期不良に対応するため
です。
問題になるのは、偶発故障です。あるものの単位時間あたりの故障率をFITと
呼びます。故障が起こるまでの期間の平均値をMTBFと呼び、ともに信頼性を考
慮、評価する上で、重要な指数です。
故障率は積算されますから、例えばMTBFが3年のハードディスクを18台使
用した製品を30台出荷したとするとどうでしょうか。この製品は単体でMTBF
が3×12ヶ月/18で2ヶ月、それを30台出荷したら2日に1台は故障を起こ
しているということになります。こんなものでは、たまったものではありません。
部品の信頼性
故障率の高い順番に部品を挙げていってみましょう。だいたい次のような感じに
なります。通常の設計だとコネクタ、トリマ、電解コンデンサをできるだけ使用し
ないように心掛けるだけでも、ある程度信頼性は良くなります。ちゃんとした会社
の部品や製品には信頼性に関するデータがあります。
最悪
- 根本的に消耗品であるもの。蛍光管、電球、バッテリなど。
- 機械的接触部を持つもの。可変抵抗、コネクタ、スイッチなど。
- 化学反応を利用しているもの。電解コンデンサ。
- 小さなエネルギーで壊れるもの。LSI、チップ部品、水晶。
- 使い方を間違えなければあまり壊れないもの。ICなど
- 定格内で使用していればあまり壊れないもの。トランジスタなど。
- 結構頑丈なもの。フィルムコンデンサ、整流ダイオードなど。
- 単純なもの。抵抗、コイル、トランスなど。
- ほとんど壊れようの無いもの。配線、基板。
最良
接続部の信頼性
部品以外で重要な信頼性要因として、はんだ付けなどの接続部があります。信頼
性の低い順に、コネクタ、はんだ付け、圧着、溶着になります。
はんだ付け部の信頼性は、はんだ付けの管理がされていない場合かなり低いもの
になります。はんだ付けに関して考慮するべきことをいくつか挙げておきます。
- はんだ付け温度とその変化率を管理する。
温度変化が激しいと、各部の膨張率の違いや吸湿していた水の急激な気化により
部品などが故障したり劣化するので。
- はんだは基本的には共晶はんだを使用する。
金属疲労が起きにくいので、接触不良を起こしにくいのと、融点が低いので作業
能率が上がるし部品に与える熱ストレスが少なくて済むから。
- はんだ付けに使用するフラックスは、低塩素のものなど腐食性が低く吸湿しにくく、
かつ洗浄が用意なものを使用する。
- チップ部品のはんだ付けには銀入りのものを使用したほうが良い。
チップ部品には電極が銀メッキのものがあり、通常のはんだだと電極の銀がはん
だ中に溶けだしやすく、電極が接触不良になるから。
- 熱起電力による雑音が気になる部分では、銅入りはんだを使用する。
- はんだ付けは、電気的接続のみを目的として使用し、強度を期待しない。
はんだ付け部に振動やストレスがかかると容易に接触不良を起こすから。
- 配線ワイヤーをはんだ付けするときには、張力のかかる可能性のある方向と同じ向
きにはんだ付けし、撚り線ワイヤーの場合は被服部分まではんだがしみ込まないよ
うにする。
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