PS5V
アナログ電流計と精密ポテンショメータへのノスタルジー
0.1 ~ 5.0 V, 1 A, 精密電源

Designed by Takayuki HOSODA
Rev.1.95 (Oct. 19, 2022)

この小型実験用電源は、基本的には 1990年に、当時の実験用電源からは消えつつあったアナログ電流計や精密ポテンショメーターへのノスタルジーから設計・製作したものです。
また、電子回路の低電圧化への傾向から、100 mV 〜 5 Vの低電圧を高分解能で安定して供給できるように設計しました。

この設計は基本的に PS5V Rev.1.4 の保守時改良であり、新規の制作を意図していません。

English English edition is here.

回路図

主な変更点は以下の通りです。
基準電圧 U1 を最新鋭の LT6657A(1.5ppm/℃)に,U2 を精密低雑音 CMOS オペアンプ TLC2202IP(0.5μV/℃,18nV/√Hz@10Hz,110dB PSRR)に置き換えました。
分圧用抵抗を1対の超高精度抵抗 PTF5610K000AZEB (0.05 %,5 ppm/℃) に変更しました。
出力コンデンサを大容量 MLCC GRM32EB31C476KE15 (27 μF @ VDC = 5 V, 2.5 mΩ ESR) に変更しました。
分圧抵抗は超高精度抵抗ではなく,整合ペア抵抗 を使用した方が良かったかもしれません。
また、U2 には 7.5 V の LDO ローカルレギュレータ を追加した方が良かったかもしれません。

Fig.1 : PS5V (Rev.1.95) 回路図
schematic

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回路図 : PS5V1R95-sch.pdf

電圧変動と長期安定性

Fig.2a : U1 を LT6657A に交換直後の実験机上における初期電圧変動 (Vout = 5 V, 22 °C < Ta < 26 °C)

40 μV/div (8 ppm/div)

はんだ付け後の初期電圧の変動はありますが、LT6657A は TL431A より格段に安定しています。
ただし、たわみ応力には非常に敏感ですので、実装・配線には相当な注意が必要です。

Fig.2b : U2 を TLC2202 に交換後の実験机上における電圧変動 (Vout = 5 V, 22 °C < Ta < 26 °C)

40 μV/div (8 ppm/div)

TLC2202IP は TLC272CP に比べ、格段に低雑音で安定しています。

Fig.2c : 15 日間のエージング後の実験机上における電圧変動 (Vout = 5 V, 22 °C < Ta < 26 °C)

20 μV/div (4 ppm/div)

プロットのさざ波はエアコンの温度制御の影響によるものです。

Fig.2d : 54 日間 (1296 時間)のエージンング後の実験机上における 244 時間の電圧変動 (Vout = 5 V, 21 °C < Ta < 26 °C)

50 μV/div (10 ppm/div)

実を言うと、主要性能部品の交換により、ドリフトの主な原因は精密ポテンショメーターの接点の熱起電力になっているようです。
精密ポテンショメーターよ永遠に!

追補 —LDO ローカルレギュレータ

Fig.3 : LDO7V5 — 高安定、低ドロップアウト、7.5 V ローカルレギュレータ (7.9 V ≤ Vin < 30 V, Vout = 7.5 V)

安定性の観点から、補償コンデンサ C25 の容量は 470 nF 〜 10 μF の範囲にする必要があります。

Fig.4 : ライン・レギュレーション (DUT = LDO7V5, Ta = 25 °C)

ライン・レギュレーション < 100 μV/V (7.8 V ≤ Vin < 19.9 V, Ta = 25 °C, Iout ≤ 10 mA)
ロード・レギュレーション < 100 μV/mA (7.8 V ≤ Vin < 19.9 V, Ta = 25 °C, Iout ≤ 10 mA)

追補 — LT6657A 用低雑音プリレギュレータ

LT6657A を直列モードで使用する場合、LT6657A の入力に例えば下図のような低雑音プリレギュレータを入れることで、 自己発熱に起因する基準電圧出力のドリフトを抑えることができます。

Fig.5 : LT6657A 用低雑音プリレギュレータ — 参考まで

注 : Q2 は起動回路として動作します。動作点における FET Q1の出力抵抗 ≒ 1/gmOPと C1 により LPF を構成しています。

Fig.6 : ライン・レギュレーションとロードレギュレーション (DUT = LT6657PR, Ta = 25 °C)

追補 — 整合ペア抵抗

Table 1. 代表的な整合ペア抵抗の市販品
MakerPart numberPart per
Package
ResistancePackageRelative
TCR
ppm/°C
Relative
tolerance
%
VishayACASN1002U1002P1AT 210k0606 5.0 0.1
AnalogMAX5490GC01000 250kSC-59 2.0 0.1
VishayMPM2002AT1 210kSC-59 2.0 0.05
SusumuRM2012B-103/103-NWXL 210k2012M 1.0 0.02
SusumuRM3216B-103/103-NWXL 210k3216M 1.0 0.02
VishayY0006V0001TT9L 210k3SIP0.5 0.01
VishayY1365V0008QT9U 410k8SOIC 0.5 0.01
AnalogLT5400BMPMS8E-1 410k8TSSOP0.2 0.025
VishayY4485V0001AT9R 210k1610 J 0.1 0.01

参考文献

関連項目


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