CW受信用オーディオフィルタ

アナログ回路の学習用教材として設計したアマチュア無線のCW受信用オーディオフィルタ回路です。
アナログ回路の学習に主眼を置いていますので多少冗長で趣味に走っているところもありますが、 一般に入手できる部品で再現性良く作れるように設計しています。
また、無線のコンテスト等での使用を考え、パソコンなどによるCWデコーダ用の フォトカプラ出力と、二人で受信できるように2つのヘッドフォン出力を備えています。


回路解説

回路図

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電源部

ACアダプタから J2 を経て 9〜13.8Vの直流を供給します。R7, C20, R20, C21, C3 は RFI 対策用の LPF です。 D8, D9 は逆接続保護用の整流ダイオードです。 U2 はシリーズ型三端子電圧レギュレータで、20℃/W 程度の放熱器で放熱を行います。 C15, C35, C16, C4 は U2 の発振防止と過渡特性改善用コンデンサです。

バイアス部(アナロググランド)部

回路を単電源で動作させるため、R33 と D4 でシャント型電圧レギュレータを構成し、ここで生成される 2.5V をアナロググランドの電位としています。 R33, C19, C36 で RFI 防止と雑音低減と過渡特性改善と U2 の発振防止を行っています。 D4 に使用している 基準電圧用IC TL431C は全帰還(2.5V)で使用する場合、発振可能性のある負荷容量領域があるので、U36 の値を安定領域の容量 10μF 以上とし、長期における U36 の容量抜けを見込んで 33μF としています。

入力部

受信機のヘッドフォン端子から J1 を経て音声を入力します。R31 はその終端抵抗です。
グランドループによるハムの混入の防止のためヘッドフォン入力コネクタのグランドは C24 によって高周波的にフレームグランドに接地、低周波的には分離としています。
R35, C37, R47, C1 は RFI 防止用の LPF です。

800 Hz バンドパスフィルタ部

3段のアクティブフィルタで増幅器を兼ねて3次対の直線位相特性の BPF を構成しています。
R31, R35, C37, R47, C1 を含んで、R28, R29, C27, C28, R1, U7A で 多重帰還型 BPF(fc=803Hz, Q=8.3, Av=11.6)を構成しています。
R54, C43, R53, C42, R50, R51, R52, U4A, U4B で フリーゲ型 BPF(fc=855Hz, Q=9.8, Av=2) を構成しています。
R55, C46, R56, C45, R57, R48, R49, U5A, U5B で フリーゲ型 BPF(fc=750Hz, Q=9.4, Av=2) を構成しています。

下図は SPICE によるシミュレーション結果です。

周波数対振幅・群遅延特性
周波数特性
V(bpf1) : 初段, V(bpf3) : 総合

過渡特性
過渡特性
V(vin) : 入力, V(bpf1) : 初段, V(bpf3) : 総合

トーンジェネレータ部

U6A, R11, C32, R8, C33 でウィーンブリッジ型正弦波発振器(fo=800Hz)を構成しています。 R12, D3, C25, R43 で半波整流を行い Q3 のジャンクションFETを可変抵抗素子として用い、 R27, R30, Q3 で決まる増幅度を変化させることにより発振器の自動レベル制御を行っています。 ブリッジ部の帰還率を小さくし Q3 の Vds を小さくすることにより Q3 の非直線性による歪みを低減しています。

トーンデコーダ部

U1 に使用している LMC567 はトーンデコード用 PLL-IC でバンドパスフィルタからの信号に C11, R44 で決まる周波数と C5 で決まるロックインレンジの信号が検出された場合に出力がアクティブになります。 C2 は直流カット用のコンデンサです。C10, C29 は電源のデカップリングコンデンサです。R1 は出力のプルアップ抵抗です。

アナログスイッチ部

トーンジェネレータからの正弦波をトーンデコーダからの信号でオンオフすることにより、モニター音を発生させます。 R40 は U6A の発振防止抵抗です。C17 は U6A は直流カット用コンデンサです。 R10 は Q4 のドレインとソースの電位を同じにするためのバイアス抵抗です。 Q4 はスイッチ用 MOS FETで、アーム抵抗 R9 と共にシャント型アナログスイッチを構成します。 Q4 のゲートにトーンデコーダからの信号を与え Q4 をオンオフします。 R58 と C50 により LPF を構成し RFI 防止と、Q4 のオンオフの過渡応答を遅くすることによりクリック音の発生を低減しています。 C18 は直流カット用コンデンサで、 R42 により U6B に直流バイアスを与え U6B で緩衝増幅を行い音声ミキサー部に出力します。

出力インターフェース部

トーンデコーダからの信号により、外部インターフェース用のフォトカプラ ISO1 とモニター用の LED D6 をオンオフします。 R26, R25 は ISO1 と D6 の電流制限抵抗です。 CN1 は外部インターフェース用コネクタです。 R3, C8, R4, C9 は RFI 防止用の LPF です。

音声ミキサー部

バンドパスフィルタからの信号とアナログスイッチからの信号を足しあわせ、音量調節用ボリュームを経て出力アンプに入力します。 R14, R16, C13, R17, R18 で抵抗ミキサーを構成しています。 R16 は音声バランス調整用、R19 は音量調整用ボリュームです。 グランドループによるハムの混入を防ぐため、シールド線のシールドは出力アンプ側だけでグランドに接続しています。

出力アンプ部

R38, C51 は RFI 防止用 LPF です。 U7B, R41, R15, R26 と出力バッファ用トランジスタ Q1, Q1 で出力アンプを形成しています。 増幅度を、R41, R15, C26 で決定し、R15, C26 で約160Hz にポールを持たせ低域での増幅度を1に下げています。 C26 は直流カットも兼ねています。C12 は位相補償コンデンサです。 Q1, Q2 でコンプリメンタリプッシュプル型電流アンプを構成しています。 R32, D1, R5, R34, D2, R6 はバイアス回路で、Q1, Q1 をAB級にバイアスしています。 C34 は電源のデカップリングコンデンサです。 R24, R23 は出力分配抵抗兼出力保護抵抗です。

音声出力部

出力アンプからの信号を2つのヘッドフォン端子に出力します。 C10, C13 は直流カット用コンデンサです。 R37, R36 は C10, C13 の充放電用直流経路です。 R45, R21, R46, R22 は出力保護を兼ねた出力抵抗です。 R45, R21, C11, R46, R22, C14 で RFI 防止用 LPF を形成しています。 グランドループ防止のため、 J3, J4 のグランドは C22,C23 によりフレームグランドに対し高周波的に接地、低周波的には分離としています。

関連項目

参考文献


www.finetune.co.jp [Mail] © 2000 Takayuki HOSODA.